さとうくんちの新聞 7 
小生、歯科という職業に従事して20年、矯正専門医として12年が過ぎました。この間、約1,000人の矯正患者さんを治療しましたが、矯正治療をする上で、抜歯を必要とした患者さんと、非抜歯での患者さんの比率は、20年間、ほとんど変化がありませんでした。
今回は、この20年の間にいったい日本人の身の回りにどんな変化が起こったのか?また、どんな身体的変化が起こったのか?を検証したいと思います。
第1回目は「日本人の顎は本当に小さくなったのか?」というテーマでお話したいと思います。
その前に、日本人の歯の特徴についてお話をしましょう。こうゆう話は、得てして人種の優劣といった話になりがちですが、決して人種的な優劣を意味していないことを、特に留意していただきたいと思います。

1 歯の長さ
日本人より白人のほうが長い。このことは日本人の身長が白人より小さいのだからむしろ当然で、日本人の身長は、白人のざっと95%であるから、歯の長さは身長に比例し短くなっている。
2 歯の幅
幅は長さのわりに大きいこれはすべての歯種に通じている特徴ですが、なかでも大臼歯で顕著である。すなわち、日本人の歯はずんぐり型で体型の反映であり、顔の形のちがいともよく一致している。日本人が笑ったとき、その歯が不釣合いに大きく見えるのもその特徴のように思われます。
3 歯列の形
歯列弓(歯並びが描く曲線)も日本人のほうが左右間(顎の幅)の幅が広く、顎の高さと顎の奥行きが小さいということです。この点も日本人の顔の特徴との一致 が見られるわけです。
4 咬合形式
口を静かに閉じたとき、上顎の切歯(前歯)は下顎の切歯の前方で少し隙間(1mm)があくこれが理想の噛み合わせです。

以上4点がおおまかな特徴です。

●日本人の食生活の変化

硬い食べ物から軟らかい食べ物への変化、すなわち、自然な味を大切にした食べ物から調理しすぎた食べ物への変化です。これはもう皆さんが知っていることで、小生は、もう一つ水物(みずもの?)が食卓の中央を占領しているという変化を感じています。日本人の食卓には、塩分(各種ミネラル)、タンパク質を補給し且つ、食べ物を口の中で混ぜやすくしてくれる味噌汁という世界に誇れる食べ物があります。でもいつ頃からかは定かではありませんが、(ここ10数年)食卓には、冷たいお茶や水などが陣取り始めました。
子供は、食べ物を口に入れ少し噛んで水でお腹の中に流し込むこんな状態が日本の食卓の現状だと感じています。
物を噛めないということは、動物の社会では、「死」を意味します。
軟らかい食べ物が顎を小さくしたという話は有名ですが、はたして本当なのか?

どう考えても食べ物の変化だけで、人種固有のDNAは20年位で変化しそうもないということです。でも、実際日本人の歯並びは悪くなっている。たとえば、フィジーやミクロネシアの人々の主食は、タロイモです。Konishiki、曙、武蔵丸は、ミクロネシア系ですが歯並びは悪くありません。軟らかい食べ物だけでは、顎は小さくならないのです。
この20年間に日本人の身長は飛躍的に伸びました。それに比例して、身体各部も大きくなるのは当然で、頭のサイズも歯サイズも大きくなりました。身長160cmの人の歯と180cmの人の歯の大きさが同じな訳がありません。どうして?前述のごとく、食事の際によく噛まなくなったからなのです。水やお茶などで食べ物を流し込み、調理されたすぎた軟らかい食べ物を食べるようになったからと推測されます。
●なぜ、顎が小さくならないのに歯並びが悪くなるの?


上の写真1と写真2と見比べてわかるように、青矢印の第一大臼歯(6歳臼歯)が舌側に倒れていることが確認できると思います。これは、歯列弓すなわち歯を並べているアーチを狭くしているということです。右図参照

物を噛むことにより、歯は直立してきます。
骨格の変化ではなく、機能の変化が日本人の歯並びに影響を与えていると小生は考えています。


この著作権はさとう矯正・小児歯科にあります。 2003.8発行:さとう矯正・小児歯科